本記事は一週間あたり約2㎏痩せるかわりに、ときには9割近いリバウンド率を叩き出すダイエット法のお話です (JAMA. 1993; 270: 967-974)
リバウンドする人が9割以上って、どうなってんだよ……
この効果があるのか無いのかよく分からない手法は、アメリカで肥満治療のプログラムとして古くから採用されているVLCDというダイエット方法です。
VLCDは「Very Low-Calorie Diets」の略ね
直訳すれば「超・低カロリーダイエット」
てことは、カロリー制限系のダイエットなのね
そう、1970年代から提唱されている歴史のあるダイエット法だよ
ちなみに1977年の調査では、短期間で18㎏以上の体重減少が報告されてるねぇ (Bistrian et al., 1977)
すごっ! 18kg⁉
ちょっと詳しく聞こうか?
というわけで、今回は「短期間ですっごい痩せるけど、リバウンド率がメッチャ高いダイエット法」、VLCDについて学んでいきましょう。
この記事を読み終わるころには、アナタはきっと、他のダイエット法を求めて彷徨っていることでしょう。
ダメじゃん……
個人でやるのはダメでも、医療上の理由とか必要な場合があるのよ
なお、記事の構成は「最近わき腹が気になってしょうがない助手」と「何事もてきと~なbon博士」のゆるゆる会話です。きっと会話だけでなく、そのロジックもゆる~いことでしょう。内容の真偽は捨て置き、エンターテイメントとしてお楽しみください。
*登場するデータは、すべて文末の出典からの採用です。
レッツ、エビデンスの無駄遣い
結論:VLCDはめっちゃ痩せる
さて、結論から言うとVLCDはメッチャ痩せます
条件にもよるけど、VLCDによる体重減少は1週間あたり1.5~2.5kg
これを12~16週間続けたときの減少量は平均でマイナス20㎏って報告されてるよ (JAMA. 1993; 270: 967-974)
つまり、だいたい4~ 5ヶ月で20㎏も痩せるってこと!?
ヤヴァイ効果だな、おい
だよねぇ
ちなみに、12~24週間行われたいくつかのVLCDの試験では、90%の被験者が10㎏以上減量したそうだよ (JAMA. 1993; 270: 967-974)
マジか
参加者の9割に効果ありって、かなり優秀な方法じゃない?
てか減少した体重が「10kg以上」?
さっき平均で20㎏減るって言ってなかった?
たぶん、この「10kg以上」はプログラムの途中で脱落した人を含んだ値と思う
脱落者込みでの「10㎏以上」の減量か、どっちにしろ凄いな
というか、VLCDってそんなに脱落率高いの?
最低でも4週間かかる長期のダイエット方法だからねぇ、不可抗力な理由もあるんじゃない?
参考までに、12週間のVLCDを含む全工程26週間の減量プログラムでは、脱落率が45%だったよ(Wadden,et al., 1992)
とはいえ、この試験で脱落した人達の平均体重は男性でマイナス20㎏、女性でマイナス14㎏だったから、かなり頑張ったのではなかろうか
半分近くが脱落ってヤバいな!
……てか、途中でやめても結構減るのね
ちなみに、このプログラムを完遂した人はどのくらい減量したの?
全工程26週間を完了した参加者は、男性がマイナス32.1㎏、女性がマイナス22.0㎏の減量だったよ
さんじゅう……にじゅう……⁉
もう、アレだわ、今からでもVLCD始めるわ
VLCDの摂取エネルギー量は「超」低い
VLCDがメッチャ痩せるのは分かったけど、具体的にはどんなダイエット法なの?
冒頭でも触れたとおり、簡単に言えばカロリー制限ダイエットだね
「VLCD=Very Low-Calorie Diets (超・低カロリーダイエット」というだけあって、定義されている一日あたりの摂取カロリーは「800kcal」とかなり厳しいねぇ (JAMA. 1993; 270: 967-974)
よく分からんが、800kcalってそんな少ないの?
参考までに、日本人の一日の推定エネルギー必要量は、30-49歳の男性で2,300~3,050kcal、女性で1,750~2,350kcalとされてるよ (厚労省HP)
ざっくり計算すると、800kcalはこれらの1/4~1/2くらいのエネルギー量ってことね
そうね
マクドナルドでいえば、ハンバーガー、ポテトM、コーラMを1個ずつ頼んだら、それで806kcalってとこ (マクドナルドHP)
それだけで、1日過ごすのはキツイな……
そういやbonも食事制限ダイエットしてなかった?
やってたよ
あれは1日あたり約1,500kcalだったから、VLCDでなくLCDってダイエット法に近いかも
VLCDのV (Very)が外れてLCDなのか
で、1,500kcal/日ってキツかった?
まぁ、ボチボチかな
参考までに、ビッグマック、ポテトL、コーラL、チキンマックナゲット(5ピース)を1個ずつ頼んだら1,493kcalになるよ (マクドナルドHP)
1食分だとガッツリな量だし、やってみないと分からない微妙さだな
で、効果のほどは?
自分の場合はだいたい5ヶ月で10㎏減だったよ
ひと月あたりマイナス2kgのペースだね
マイナス8㎏/月のVLCDと比べると、確かにマイルドなダイエット法みたいね
VLCDはめっちゃリバウンドする
さて、VLCDの話に戻りましょう
実はこのダイエット法、めっちゃリバウンドします
ダメじゃん……
ちなみに、どのくらいリバウンドするわけ?
そうねぇ、VLCDの総論レポートで研究者が、「長期的な減量にはあんまり満足できない」って書いちゃうくらい (JAMA. 1993; 270: 967-974)
マジかよ……
実際、VLCDで平均19㎏痩せた36名が、1年後に10㎏リバウンドした報告があるよ (Wing et al., 1991)
たった1年で半分以上の体重がカムバック⁉
この話には続きがあって、ダイエットを終了した5年後、マイナス5㎏の減量をキープできていた人たちは約1割しかいなかったそうな
おいおい、9割の人が元通りじゃんかよ……
残念ながら、こういったリバンの例はVLCDでは珍しくないみたいよ
別の文献でも、17.5kg減量した30名が、2年後に16.7㎏リバンしたことが報告されているよ (Sikand et al., 1988)
この場合だと減量した体重のうち、約95%が元に戻ったわけですな
せっかく痩せたのに、結末がこれじゃあ絶望だわ……
そんなこんなで、VLCDは「多くの患者は5年以内に体重が元通り」って総括しちゃってレポートもありけり (JAMA. 1993; 270: 967-974)
VLCDを実施するには一定以上のBMIが必要
VLCDでリバウンドしやすいのは分かったけど、長期的に減量をキープできてる人も一定数はいるんだよね?
もちろんいるよ
じゃあ、その希望に賭けたい、日本で挑戦したいって人はどうすればいいの?
さあ?
アメリカにはVLCDの専門機関があるっぽいけど、日本はどうなんだろね?
まあ、どの国で試すにせよ、専門医の監督の元で適切に行うことが大前提だね
それって、医学的にアブナイってこと?
そう
今は安全に実施するためのガイドラインが整備されているけど、摂取すべき栄養分が不明瞭だった過去には58件の突発死が報告されてるの (JAMA. 1993; 270: 967-974)
それに一日に摂取する800kcalについても、VLCD用に特別設計されたパウダー食がメインだから、どっちにしろ専門機関じゃないと実施できないんよ
けっこうガチなダイエット法なのね……
てことは費用もお高いわけ?
一例だけど、26週間のプログラムで約3,000ドルだそうな (Wadden et al., 1992)
たっか⁉
これでリバウンドしたら2度ガッカリだわ
あと大事なことだけど、VLCDはBMI*が30以上ないと実施できないよ (Bray et al, 1988)
ちなみに、2018年公表の日本人の平均身長は成人男性167.3cm、成人女性が154.2cmなんだけど(e-Stat, 2018)、それぞれの体重が84kg、72kgあたりがBMIで30になるよ
BMIが30って結構な値*だな……
なんでそんなにBMIが高くないとダメなの?
BMIの低い人がVLCDをやると、脂肪だけじゃなく、必要な組織まで痩せちゃうから
どゆこと?
VLCDでは減少する体重のうち、75%くらいが脂肪の消失に由来するのね
でもBMIが低い人は筋肉・骨・内臓などなど、大事な組織の減少割合が高くなるんだって (Bray et al, 1988)
いわゆる不健康な痩せ方ってやつね
まとめ
それではVLCDについておさらいしてみましょう
本記事のまとめ
- VLCDは”Very Low-Calorie Diets (超・低カロリーダイエット)の略
- 体重の減少は1週間あたりマイナス1.5~2.5kgくらい、実施期間は通常12~16週間
- 1日の摂取エネルギー量は800kcal
- 実施には30以上のBMI・専用の食品・専門医の監督が必須 (不適切な実施で死亡例あり)
- めっちゃリバウンドする
個人で試せないダイエット法だったわ……
というわけで
今回は「VLCDはすっごい痩せるけど、めっちゃリバウンドするダイエット法」というお話でした
助手はVLCDに挑戦したいなら、まずはBMIの30越えを目指そうね
わざわざ太ってどうすんだよ!!
本日の出典
- National Task Force on the Prevention and Treatment of Obesity and National Institutes of Health (1993): Very low-calorie diets. JAMA 270, 967–974.
- Bistrian BR, Blackburn GL, Stanbury JB. Metabolic aspects of protein-sparing modified fast in the dietary management of Prader-Willi obesity. N Engl J Med. 1977;296:774-779.
- 厚生労働省HP, 日本人の食事摂取基準 (2020年版)
- マクドナルドHP, データ一覧表, 2021年10月26日付) https://www.mcdonalds.co.jp/quality/allergy_Nutrition/nutrient/
- Wadden TA, Bartlett SJ. Very low calorie diets: an overview and appraisal. In: Wadden TA, Van Itallie TB, eds. Treatment of the Seriously Obese Patient. New York, NY: Guilford Press; 1992:44-79.
- 政府統計の総合窓口(e-Stat), 統計名 国民健康・栄養調査 (2018)
- Atkinson RL. Low and very low calorie diets. Med Clin North Am. 1989;73:203-215.
- Wing RR, Marcus MD, Salata R, Epstein LH, Miaskiewics S, Blair EH. Effects of a very-low-calorie diet on long-term glycemic control in obese type 2 diabetic patients. Arch Intern Med. 1991; 151:1334-1340.
- Sikand G, Kondo A, Foreyt JP, Jones PH, Gotto AM. Two year follow-up of patients treated with very low calorie diet and exercise training. J Am Diet Assoc. 1988;88:487-488.
- Bray GA, Gray DS. Obesity, I: pathogenesis. West J Med. 1988;149:429-441.