前回のおさらい
エリンギはガチでエレクトしていない
そんな分かりきった事実に、誰もが目をそらして生きている。
だがそれで本当に良いのだろうか?
子供の頃、みんな一度は思ったはずだ。
不都合な真実に目を背ける、そんな汚い大人にはなりたくないと。
ある日、著者bonは気付いた。
いつの間にか、そんな毛嫌いをしていた大人に、自分がなっていたことに。
まだ、ワタシはやり直せるだろうか?
そんな疑問が脳裏に浮かぶ、当然ながら答えはない。
だが、答えを探すことはできる。
そして彼は、自らエリンギのエレクト栽培技術を開発することに決めた。
無謀な挑戦が今、幕を開ける。
なんだよコレ?
種菌を完成しるッ
やあ、良い子のみんな、こんにちは。
実験資材あつめの沼にどっぷりハマっているbonだよ。
顕微鏡、もう要らんだろ?
いつか使う、きっと使う
さて、そんな些末は気にせずに、今日はエリンギの種菌を完成させようね。
これが完成すると、いつでもどこでもポール氏のクローンが作れるようになるよ。
エリンギのサンプル名。雑菌に襲われやすい不運の持ち主
ポール、増殖中
さて、まずはポールの様子をチェックしてみようね。
前回は雑菌が混入したシャーレから、PDA培地 (もどき)のシャーレに脱出させたよ。
・PDA培地:栄養たっぷりのゼリー
・もどき :市販品で無理やり作ったため、約6倍の糖尿病リスクを誇るジャンク培地
順調なのか?
たぶん
おお、ポールは元気そうじゃあないか。
メタボ培地でも意外とすくすく育つものですな。前回心配していた雑菌の感染も大丈夫みたいだし、これなら種菌ができそうね。
ではさっそく、ポールを封印する準備に取りかかろうね。
PDA培地を充填した試験管にポールをぶち込む作業。邪悪な雑菌が手だしできなくなる
中二病かよ
聖櫃 (PDA培地の試験管 ver.)をつくるよ
まずはポールを封印する聖櫃 (せいひつ)を作ろうね。
聖櫃、知らない?
まあ、一部の界隈では試験管なんて野暮な呼び方をされているよね。
んで、その試験管何某 (なにがし)にPDA培地を充填したのが、種菌の寝床になるって寸法ね。
シャーレじゃダメなの?
シャーレだと、そのうち雑菌がカチこんでくる
試験管にPDA培地を充填
試験管のPDA培地バージョンを作るのは簡単だよ。以前つくったPDA培地 (ドロドロ汁)を充填して、滅菌すればお終い。
まずは充填してみようね。
量はテキト~でOKだよ。
こんな感じかな。
ちなみに試験管のフタはシリコン製だよ。通気性はあるけど、雑菌を通さない優れモノね。
密封すれば雑菌も入らないけど、ポールが窒息死するからね。
昔々のやり方、もしくはラボによっては、丸めた綿で栓をする場合もあるけど、技術の進歩にゃ感謝ですな (=綿は超メンドイ)。
高いけどね
試験管を滅菌
PDA培地を充填したら、試験管を滅菌するよ。
毎度お馴染み、圧力鍋にて121℃で20分間の熱処理だね。
これもラボによっては、フタの部分をアルミホイルで包んだりもするけど、うちはメンドイから却下ね。
フタ、何のために包むの?
さあ?
冷ましたら完成
試験管の滅菌が終わったら、写真みたく斜めにして冷ますよ。
冷えて寒天成分が固まったら完成ね。
ちなみに斜めにするのは、カビがはびこる表面積を増やすためだよ (たぶん)。
シャーレの別名は平板培地、試験管は斜面培地ね
ポール、その後
うぉおおい!
モッサモサじゃあないか、ポール!
よくみりゃ、培地の表面だけでなく、シャーレの壁面やフタ、はたまた外にまで飛び出しとるよ。
なんという、なんという繁殖力。いや、イヤらしい欲張りさんなんだ。
ここまでの欲しがり屋さんなカビは、なかなかに珍しいよキミぃ。
そんなに?
シャーレを飛び出すのは初めてかも
この圧倒的な増殖力、もともとポールに備わっているポテンシャルなのか、それともメタボ培地がキマった効果なのかは不明ですが、いずれにしろシャーレの外にまで出るのはいただけません。
なぜなら、【外気=雑菌うようよ】なので、カビやらバクテリアやらに感染しちゃうからです。
それにワタクシ、終始グイグイと押してくる欲しがりさんよりも、たまに羞恥心を覗かせる欲しがりさんの方が燃えるタチなんです。
というわけで、ポールには恥じらいという概念を覚えてもらいましょう。
ちょうど試験管は360度、全方向が透明で、外部から覗かれ放題です。
この環境であれば、きっと彼も恥じらいの尊さに気付くことでしょう。
なんの話だよ
ポールを試験管に封印
それではさっそく、欲しがりポールを試験管にぶち込んじゃいましょう。
このシャーレから試験管への移植作業は、クリーンルームで行うよ。
雑菌フリーの空間。著者はアルコールランプを灯した空間をクリーンルームと呼ぶ。ランプの炎が上昇気流を生み出して雑菌を寄せ付けない、そう信じているのだ
前回、雑菌に感染したじゃん
ちなみに移植作業はめっちゃ簡単だよ。火炎消毒した白金耳 (はっきんじ)を使って、寒天ごとポール切り出すだけ。
てなわけで、試験管への移植作業はアッサリ終了ね。
試験管はシャーレよりも開口部が小さいし、フタもしっかりしているから、外から雑菌が侵入しづらいのよ。
どんくらい持つの?
保証期間1ヶ月、頑張れば3ヶ月いけちゃう (ハズ)
種菌の完成
そんなわけで、ポールのお仕置き開始から20日が経ったよ。
菌糸が見事なまでにモッサリと育ったね。
これがいわゆる種菌なのです (たぶん)。
あとは必要なときに、この試験管からちょいちょいと切り出せば、いくらでもシャーレでポール・クローンが生み出せるっていう寸法ね。
意外とデキるもんだな
散財したケタが違うのだよ、ケタが
というわけで、ようやく種菌の完成です。めでたしめでたし。
次回は本培養を開始しますよぅ。
ようやく種菌が完成した。
今後、世界にはポールのクローンが無限に湧いてくることだろう。
もはや誰も彼を止めることは出来ない。
人類は滅亡の危機に瀕していた。
にやり
やめんか
全体フロー