前回のおさらい
ガチでエレクトしたエリンギが見たい
そんな少年たちの夢を叶えるため、著者の挑戦が始まった。エレクトを実現する栽培技術を開発するのだ。
彼はまず、エリンギ栽培の基本となる種菌 (=菌糸の塊)つくりに取りかかった。
これに必要なのは寒天培地、そしてPDA培地を作ることだ。
試薬が買えない、助手がアブナイ。さまざまな困難を乗り越え、彼はついに2種類の培地 (もどき)を作り出した。
あとはエリンギのオリジンとなる菌糸を採取できれば、種菌つくりは成功したも同然だ。
しかし、その肝心なエリンギは沈黙していた。菌糸が伸びてこないのだ。
これでは種菌をつくれない。ラボは閉鎖の危機を迎えていた。
どうすんのさ?
種菌をつくるよ
やあ、良い子のみんな、こんにちは。
あれこれ買いすぎて、実験資材の置き場に困っているbonだよ。
廊下もごちゃごちゃ
消防署から怒られるだ~ね
さて、そんな些末は気にせずに、今日はエリンギの種菌 (=クローン)つくりをやっていくよ。
それではさっそくクローンのオリジンこと、ポール氏に登場してもらいましょう。張り切ってどうぞ。
エリンギのサンプル。サイズはそこそこだったが、本体は助手に両断された
まずは観察|寒天培地のポール氏
ぜんぜん増えてないじゃん
おっかしいぞぉ??
ポールを寒天培地にセットしてから3日、そろそろ菌糸が伸びてきてもいいんだけど。
うんともすんとも言わないよ、この子。
もしかして表面殺菌したとき、ポールも一緒に召されちゃったかしらん?
ポールを寒天培地にセットする直前、濃ゆいエタノールでガッツリ殺菌したのであった
無理やり作った塩入り寒天培地のせいじゃない?
それもあり得ますなぁ
う~ん、ここまで市販品でゴリ押し実験してきたけど、そろそろ限界ですかねぇ。
まあ、とにかく引き続ぎ様子を見ませう。
培養5日後
うぉおおおお!!
しゅ、しゅごぉおおおい!!
ポールから菌糸が出てるよぉおおお!!
ふふふ、成功だ
よく見えないんだけど?
もう、助手氏ったら若いのに、もう老眼きちゃってるのかな?
でも大丈夫ですよ。
そんなアナタのために買っておきました。ラボと言えばやはりコレでしょう。
そう、光学顕微鏡ですッ!
コヤツを使えば、どんな小さなものだって覗けちゃいますよ。
カビでも、バクテリアでも、助手氏の毛穴だってプロジェクターでドアップでさあ!
死なす
てなわけで、見せてもらおうか。光学顕微鏡の性能とやらを。
ポールのオリジン、大地に立つッ
おお!! ぽぉーるぅぅううう!
組織片からモッサリ生えているじゃないか!!
会いたかったよ、マイフレンドよ。
キミが助手に惨殺されてから、実に5日ぶりの再会じゃあないか。息災そうで何よりだよ。
人聞きが悪いな
見たところ、雑菌も憑り付いていないようだし、これならPDA培地に移植できるね。
もうちょいと菌糸が伸びたらオペしましょう。
と、思いきや緊急オペだ
あら? あらあらあら?
シャーレをもう一度よく見たら、右上のポールが雑菌に喰われとるね。
それも、アオカビと謎バクテリアのコラボレーションっ!!
彼は手遅れですな
なんてこったい、恐れていた雑菌の混入じゃあないか。
これは非常に由々しき事態ですよう。残った2個のポールが貞操の危機ですッ!
どーゆーことだよ?
あの雑菌、胞子をまき散らかすのよ
いちおう顕微鏡でチェックしてみたけど、今のところ、残りのポール2体は雑菌に感染してなさそうだよ。
でもいつ胞子が舞っても、おかしくない状況だね。
てなわけで、緊急オペを開始します。
ちょいと早いけど、無事なポールをPDA培地に移植するよ。
緊急手術|ポールをPDA培地に移植する
というわけで、緊急手術のお時間です。
いつも通り、アルコールランプでこさえたクリーンルームで作業していきませう。
雑菌フリーの素敵空間。アルコールランプによる上昇気流で雑菌を寄せ付けない寸法
手術って言ってもヤルことは簡単だよ。ポールの無事な部分をPDA培地に移すだけ。
白金耳 (はっきんじ)を火炎消毒して、ちょいちょいと寒天をポールごと切り出せばOKよ。
写真の金属棒が白金耳ね
脱出完了=クローン培養開始
てなわけで、【寒天培地】→ 【PDA培地】の移植手術はアッサリ終了ね。
PDA培地は栄養たっぷりのエサだから、脱出したポールがバクバク食べて、モサモサ育つハズよ。
移植した欠片、雑菌に汚染してないわけ?
さあ?
でもまあ、雑菌の感染が不安だから、同じように移植したシャーレをいっぱい作ったよ。
このうち、シャーレ1枚でも移植が成功してたら万々歳だね。
解決策が原始的だな
これでしばらく放置しておけば、ポールが育ってモッサモサになる寸法ですな。
そしてそのモッサモサな菌糸こそが種菌なのですよ。
やれやれ、今回のトラブルは雑菌の混入くらいでしたな (ぜんぜん余裕でつまらぬッ)。
さて、次回はいよいよ本培養の開始ですよぅ (たぶん)。
ちゃんとキノコができるか、チェックするわけね
まあ、種菌ができてりゃ、ね…… (意味深)
ポールのPDA培地への移植は完了した。いよいよ種菌つくりは最終段階へと入ったのだ。
しかしながら、移植されたポールは、本当に雑菌感染していないのか?
ポール①「おい、血が出てるぞ」
ポール②「なぁに、ちょっと引っかかれただけだ」
そんなやり取りを他所に、PDA培地は培養フェーズに移行したのだった。
全体フローね