前回のおさらい
エリンギをガチでエレクトさせたい
エリンギに至高のエレクトをもたらす禁断の栽培技術。その開発が始まった。
まず最初にやることは、素体となるエリンギの種菌つくり。これに必要なのは寒天培地だ。
寒天培地は超が付くほどのシンプルな培地、ドラクエでいえばスライム並みの攻略難度である。
ところが著者は大人の事情により、試薬が買えなかった。
当然だが、試薬=材料がなければ培地は作れない。
著者は凡庸な科学者 (もどき)であり、決して錬金術師ではない。
結局、なす術のない彼は、泣く泣くスライム相手にメガンテを放ち、エリンギのエレクト企画は跡形もなく消え去った。
マジメにやれ
前回のおさらい (ver. 真面目)
試薬が買えない。
そんな衝撃の事実から一夜、追い詰められた著者は、寒天試薬を市販の寒天で代用する暴挙にでた。
その後、たび重なる助手のツッコミを受け流し、かくしてナゾの物質が大量混入した寒天培地 (液体ナウ)ができあがる。
しかしbon’ラボには、これを滅菌できる文明の利器「オートクレーブ」がなかった。
実験機器。でっかい圧力釜のこと。121℃の地獄の高温で雑菌を駆逐 (=滅菌)する。
ちなみに、この滅菌をせずに作業を続けるのは危険だ。きっと近いうちに寒天培地には雑菌がはびこるだろう。するとエリンギはこれら雑菌に襲われ、あっさり全滅するに違いない。
そうなれば田畑は荒れ、野山は枯れ果てる。やがては水源の池や川も干上がるだろう。もはやエレクト開発に割けるリソースは皆無となる、絶望だ。
ラボは再び閉鎖の危機に瀕していた。
もう閉鎖しろよ
寒天培地つくりのフロー
・試薬が買えないッ
→ 市販品でごまかす
・寒天培地うすしお味のレシピが完成
・液体を計るメスシリンダーがないッ
→ 計量カップでてきと~に計る
→ 寒天培地 (液体ナウ)をGet
・オートクレーブがないッ ←今ココ
・寒天液が冷えて固まったら完成
寒天培地 (液体ナウ)を滅菌するッ
やあ良い子のみんな、人生行き当たりばったりが信条のbon だよ。前回は寒天培地 (液体ナウ)をつくったところで終了したね。
今回はこれを滅菌して、シャーレにぶち込み、寒天培地を完成させるよ。
でもオートクレーブないじゃん
いかにも。我が科学貧国にそんな贅沢品はありません♪
でもね、要は滅菌に必要な121℃の環境を作ればいいわけさ。
てなわけで、買ってきましたよ、奥さん。
そうです。これこそが文明の利器、圧力ナベッ!
あゝ、新品のステンレスが織りなす、ギラギラした扇情なるキラメキ。そして網膜を無遠慮に突き刺す強烈な反射光、実に、イイ。
そう、これはまるで、見る者すべてを蔑 (さげす)むような、助手の眼光そのものじゃあないか。
あゝ、ゴリゴリとえぐるような視線が、ワタシの心に潜むナニかを解き放とうとしている。
まさか、これが、ト・キ・メ・キ?
本題に戻れ、変態
圧力なべのスペック
さてさて、生きとし生けるものを死滅せしめる地獄の高温、121℃。
この121℃をそんじょそこらの圧力なべで再現できるか、不安なアナタ。
きっと大丈夫。ワタシは信じていますよ、この子はやればデキる子だと。
また、テキトーなことを
まあまあ、そこまで言うなら、ナベのスペックを見てみましょうね。
説明書には作動圧力が2気圧って書いてあるね。
てことは、このナベが本気を出したら、内部は200kPaくらいの圧力になる(ハズ)。
すると水の沸点がぶち上がって、理論上は120.6℃まで水温が上がる (ハズ)。
したっけ、ナベ全体がほぼ121℃の蒸気で満たされ、滅菌ができてしまう (ハズ)。
うむ、完璧ではないか。
なんと、なんと素晴らしい性能なのだ、圧力ナベよ。もはや、これは単なる調理器具とは呼べないだろう。
そうだ、今後はオートクレーブと呼ぶことにしよう。
いや、圧力ナベだから
汚物を消毒する
というわけで、汚物は消毒のお時間がやってきました。
寒天培地 (液体ナウ)をナベに入れ、121℃ (くらい)で20分間の熱処理をします。
きっと、この無慈悲なドゥンによって、ボトル内の生態系は、跡形もなく灰塵と帰すことでしょう。
それにしても、このコトコトと健気に頑張るナベ氏、思えばなんと不憫な子なのでしょう。
本来であれば調理器具として一生を全うしたはずなのに、こんなおウチに来たばかりに、オートクレーブ扱いされちゃうなんて。
さらには助手からは「おまえのような無駄に重たいブタは、雑菌の相手がお似合いだよッ!!」などと罵られちゃうなんて。
言ってないし
シュー!シューーー!!
おやおや、そんな同情は無用だったようですね。
この子ったら、オートクレーブと呼ばれながらも、熱々のヨダレをびちゃびちゃと吹きこぼして、なんてはしたない。
しかも、シュー、シューと悦びの吐息まで悶え散らかすとは、恥を知りなさいッ!
火が強すぎます。弱火にしましょう。
はじめてのプレイにもかかわらず、この悶えよう。どうやら、とんでもなくイヤらしい子が、ラボに仲間入りしてしまいましたね。
しかしながら、これはワタシにとっても好都合。
ご褒美にそのまま20分間、滅菌が終わるまで放置プレイを命じて差し上げますわッ!
シューーー!!!
アホすぎる
で、できた。
ふふふ、感じる、感じるぞ。雑菌どもが全員ドゥンされているのを。
ついに、寒天培地 (アツアツ汁ナウ)の完成だ。
あとはこのアツアツでトロトロした汁をシャーレに流せば、寒天培地 (うすしお味)が完成ですな。
振り返れば、なんと長い道のりだったろうか。
まさかスライム並のザコ培地に、ここまで手こずるとは思わなんだ。
ふざけ過ぎなんだよ
寒天培地の完成
では最後の工程に移りましょう。
無菌操作で寒天培地 (アツアツ汁ナウ)をシャーレに流し込みます。
雑菌ゼロの環境における作業。手術はだいたいコレ (たぶん)
知ってのとおり、空中には目に見えない雑菌がウヨウヨと漂っているのね。
なので、迂闊に培地を空気中にさらすと、これらの雑菌が、再び培地に飛び込んできちゃいます。
それはもう、あっさりと汚染します。
なので、シャーレにトロトロ汁を移すときは、クリーンベンチを使いますよ。
実験機器。空気をろ過してクリーンルームをつくり出す装置。ざっくり言えば、雑菌が入れない簡易結界
で、そのクリーンベンチが見当たらないんだけど
やだなぁ、助手氏。冗談がキツイよ。
あんな高価なモノ、買えるわけないじゃん。
オモチャみたいな小さいタイプでも12万円とか、一生分のうまい棒が買えるっつ〜の。
そもそも、あんな馬鹿でかいモノを自宅に置くなんてむ〜り〜。
金銭的にも物理的にも、む〜り〜。
寒天培地、汚染されるじゃん
そう、ね……
さて、紆余曲折の末に寒天培地 (アツアツ汁ナウ)はできた。
だがそれをシャーレに流し込む術がない。このままでは寒天培地が汚染されてしまう。
ラボは再び閉鎖の危機に直面していた。
つづく、のか?
ココまでの履歴ね
エレクト技術開発|全体フロー
完了
1 寒天培地をつくる ← 今ココ
2 寒天培地で「種菌の種菌」をつくる
3 PDA培地をつくる
4 PDA培地で種菌をつくる
・グレイトな培地の開発
・グレイトな培地で培養
・すっごいエレクトが実現