前回のおさらい
研究テーマ=エリンギをガチでエレクトさせる
オリジナルのエリンギ栽培技術をつくりたい。そんな想いが結実し、技術開発がはじまった。
と同時に、著者には数々の試練が立ちはだかった。試薬が買えない。機器が買えない。助手が怖い。
ラボは幾度となく、閉鎖の危機を迎える。
しかしながら努力 (?)の甲斐があり、ついに彼は寒天培地 (うすしお味)の開発に成功する。
市販品でむりくり作った寒天培地。塩をはじめとする不純物がてんこもり。スペック未知数
培地ができた。これでエリンギ栽培の入口にあたる、種菌の種菌つくりが可能となった (ハズだ)。
実験開始より1ヶ月、いよいよラボは、本格始動を開始しそうな気配がないこともない感じになった。
自信ないのかよ……
エレクト技術開発までの全体フロー
・花でいう「種子」をつくる作業
種菌の種菌をつくるッ
やあ、良い子のみんなコンニチワ。
これまでに購入した大量の実験資材、その支払い期限に日々、怯えているbonだよ。
買いすぎなんだよ
さて、そんな些末なことは捨ておいて、今回はいよいよエリンギのクローンこと、種菌の種菌をつくる作業をはじめるよ。
雑菌フリーな菌糸の塊。この欠片を新しいシャーレに移せば、いくらでも綾波 クローン (=種菌)がつくれてしまうのだ
久々のエリンギ (=サンプル)登場
それでは実験開始です。やる事は簡単。エリンギの組織をちょこっと取って、寒天培地 (うすしお味)にのせるだけです。
ここで培地を使うのね
つくるの、マジ大変だった……
ではでは早速、サンプルのエリンギ氏に登場してもらいましょう。彼こそが将来、えっぐいエレクトを我らに見せてくれる、オリジン (=種菌の種菌)となるのです。
なんか、前と形変わってね?
前の子、傷んできたから喰った
ふむ……、太さ・長さはボチボチ。しかしながら全体のバランス、シュッとしたシルエットが実にエレガントですな。
きっと彼は、良い種菌となるに相違ない。どうか名を、名を聞かせてはくれまいか、マイフレンドよ。
私はポール。ポール・ネルソンだ、マイフレンド
ポール・ネルソン、、、ふむ、名の由来を紐解くならば、
小さき (Paul)・チャンピオン (Nelson)、ということか。
実にいい名だ、それでこそオリジンとなるにふさわしい。
君とはこれから長い付き合いになるだろう。よろしく頼むよ、ポール。
ではさっそく種菌つくりを始めよう。助手氏、下準備をたのむよ。
ほらよ
ポ、ポォオオオオーーーールゥゥウ!?
ちょっ、助手ぅぅうう! 切り方! 切り方をもっと考えて!!
ちっくしょう、なんてこったぁぁ!! ポォオオオオーーーールゥゥ!!
うぅ、ぐすっ、えっぐ、ぽぉるうぅぅ……
ポール、約束するよ。きっと、きっといつか、ポールのポールから立派なポールを培養して、えっぐいポールにしてみせるから。
ああ、うっさい
オリジン・サンプル採取
失礼、取り乱しました。気を取り直して作業を続けましょう。
まずはポールの組織片を採取します。大きさは5mm角くらいね。写真みたく、身体の内部から切り出すのがコツだよ。
なんで?
雑菌が少ないから (たぶん)
次に切り取ったポールを表面殺菌するよ。
基本的に空気に触れたとこは、雑菌に汚染してると考えようね。これは表面殺菌でドゥンします。やり方はこちら。
良い子の表面殺菌
メンドクね?
うん、メンドイ。そして例のごとく、試薬 (次亜塩素酸)が買えない。
基本、一般人は買えない (チョー困るんですけど)
てかね、この方法ってポールにだいぶ忖度してるのよ。言い換えれば、雑菌に厳しく、ポールに優しい殺菌方法なの。
どゆこと?
なんていうか、殺菌力の配分が「表面はカリッと、中はフワッと」っていうか、「表面の雑菌には右ストレート、中のポールには猫パンチ」みたいなイメージ……
ほら、雑菌もポールもカビだから、本気で消毒したらみんな仲良く死んじゃうのね。
なので、ポールの大部分が生き残るようにしてるの。
で・も・ね、
他所は他所だから、うちは甘やかさない方針だから、 (メンドイので)このように簡略化しますッ!!
表面殺菌 ver. bon
はしょりすぎだろ
ふふふ、なんと潔く、かつビューティフルな表面殺菌の手法だろうか。
もはや「消毒後に細胞が数個、奇跡的に生き残ってりゃいいや」、そんなコンセプトがヒシヒシと伝わってきますね。
これぞまさに、漢・表面殺菌ッ!!
ということで、表面殺菌はてきと~にやっちゃいましょう。
汚物は消毒だ (表面殺菌)
それではさっそく、ポールには77~81% エタノールに肩まで浸かってもらいましょうね。
なんで77~81%って、幅があるわけ?
市販エタノールって、あやふや表記なのよ。濃度調整できない、、、
さぁて、30秒が経ちましたよ。くっくっく、さてさて、誰が生き残っているかしらねぇ~。
全滅してたら、どうしてくれましょう (泣)。
ポール on the 寒天培地
さいごの作業だよ。内部までバッチリ表面 (?)殺菌したポールを、寒天培地にのせましょう。
これは無菌環境で作業します。アルコールランプの近くなら、雑菌がシャーレに入らない (ハズ)よ。
上昇気流で雑菌が落ちてこない、ってヤツね
火力ヤベェ、エタノールが濃すぎるぞい
ちなみに写真のピンセットも火炎消毒してから使ってるよ。
ポールったら真っ赤に焼けたピンセットでつまんだら、ジュウジュウ喘いでいたけど、無視して寒天培地にねじ込んどいたさ。
あとは室温で数日放置しておけば、菌糸が伸びてくるハズ。
そいつをPDA培地に移せば、種菌の種菌が完成だよ。
PDA培地って?
……つくるの忘れてた
栄養たっぷりな寒天培地。菌糸の培養にオススメ。もちろん、PDA培地の素 (試薬)は買えない
ちなみにPDA培地がつくれないと、ポールは寒天培地 (ほぼ水)で餓死すると思うよ。
たぶんその前に、雑菌が混入して喰われて死ぬけど。
ダメじゃん
そう、PDA培地は種菌つくりの要、これが無ければポールに未来はないのだ。
ラボは再び、閉鎖の危機に陥っていた。